小説 学園ライフ! 1-5
1−5 良い奴…関西。
雑踏を歩いていると、自分を呼ぶ声にもなかなか気づけないことがある。
「なぁ」
廊下の喧噪。その中の一つが、僕を呼ぶ声だとは、気付かなかった。
「なぁって」
「うわっ?」
気付いたときには肩に手を置かれていた。
それがいきなりだったもので、つい妙な声が出てしまった。
「なんや自分、けったいな声出すなぁ」
振り返った先にいるのは、日に焼けた肌と白い歯。
一目で分かる体育会系。
…それにしても、何故関西弁なのだろう。
「えぇと、誰?」
「おいおい!自己紹介、お前の一つ前やったやん!自分の前の奴くらいは覚えとこうや!?」
僕の出席番号は二番だ。その一つ前ということは、一番か。…名前は、確か…。
「青木…修平だっけ?」
「ピンポーン、大正解。修平でかまへんで。あんじょうよろしゅう、仰木和志君。」
「あ、よろしく」
顔をほころばせ、握手を求めてくる修平。
手を差し出すとがっちりと握り、激しく上下に振った。
…あれ、『あんじょうよろしゅう』って関西弁か…?京都じゃなかったっけ…。
「それで修平、何の用?」
話を本題へ飛ばす。
「おう、それやねん。桜乃のことやねんけどな」
へぇ。修平は桜乃さんと知り合いなのか。
中学が同じだったのか?
「あいつと仲良うしたってえな?中学ん時、友達少なかったんや。あいつ表にはださへんけど、寂しがりやねん。…やから、頼む」
何をするかと思えば、頭を下げた。
この人目につく中で…困る。
「あ、頭あげてくれ修平!わかったから!」
「ほ、ホンマか!?おおきに!」
頭は上げてくれたものの、やはりお辞儀はする修平。
…余計目につく気がする。
と、修平の頭が上がった瞬間だった。
「『おおきに』じゃないわよ馬鹿」
ぱっしぃぃぃん。いい音が鳴る。
何処から持ち出したのかハリセンで修平の頭を叩いたのは、他でもない桜乃さんだった。
「さ、桜乃!?」
両手を挙げて、オーバーに驚く修平。
…もしかすると、本当にそのくらい驚いていたのかも知れない。
「あのねぇ、そういうこと言っちゃうからみんな引いちゃうんじゃないの!?」
「か、堪忍!堪忍やて!」
胸ぐらをわしづかみにする桜乃さん。敵わないと思っているのか、速攻でギブアップする修平。
「問答無用ぉぉぉ!!」
スパパパパン!
凄い、ハリセンの動きが見えない…っ!?
「大体あんたは昔っからねぇ!」
「せ、せやから堪忍やて!もうしません!」
そんな二人のやりとりを見ていて、ふと。
「…は、ははは」
思わず笑みがこぼれた。
「…は、はっは」
「…くすくす」
つられて二人も笑い出す。
この時、廊下にいる生徒全員から好奇の目で見られていた事に、僕ら三人は気付いていなかった…。
<< 小説 学園ライフ!1−6 | HOME | 小説執筆中 >>
| このページの上へ |





